作る仕事と表現する仕事の違い|クリエイターの役割を整理
「クリエイター」とひとことで言っても、仕事のなかには2つの顔があります。誰かの依頼に応えて作る「作る仕事」と、自分の考え…
text: HYPE編集部
コピーライターの記事一覧へ「クリエイター」とひとことで言っても、仕事のなかには2つの顔があります。誰かの依頼に応えて作る「作る仕事」と、自分の考えや世界を形にする「表現する仕事」です。この2つを混ぜたまま働くと、「頼まれた仕事なのに自分らしくない」「自分の作品なのに、仕事にならない」と、迷いが生まれがちです。この記事では、2つの役割の違いを整理して、迷いを減らすための線の引き方を紹介します。はてなブログでも、別の角度から書いています。
目的が、そもそも違う
作る仕事の目的は、依頼者の目的を実現することです。商品を知ってもらう、応募を増やす、社内に伝える。評価の基準は、「相手の目的が達成できたか」になります。
一方、表現する仕事の目的は、自分の考えや感情を形にすることです。評価の基準は、「自分が納得できたか」「見る人に何かが伝わったか」です。どちらが上ということはなく、ものさしが違うだけです。
作る仕事は、相手の目的に仕える
作る仕事で大切なのは、目的を正しく理解すること、条件(納期・予算・形式)を守ること、確認の流れに沿って進めることです。自分の好みより、相手の目的を優先します。
ただし、仕えることは、言いなりになることではありません。どう形にするかの判断は、自分の知識と技術で行います。判断に理由をつけられる人ほど、任されやすくなります。基礎教養が仕事に効く理由は、別の記事で整理しています。

相手の目的に仕える仕事でも、作ったものの権利は自動では相手に移りません。著作権が原則として著作者にあることは、文化庁の著作権制度の解説で確認でき、納品と権利の扱いを分けて考えることが、役割の整理の前提になります。
表現する仕事は、自分の問いから始まる
表現する仕事は、自分が気になっていること、伝えたいことから始まります。締切も、形式も、基本は自分で決められます。その自由さの代わりに、評価がすぐには返ってきません。
だからこそ、発信や展示のように、見てもらう場が支えになります。表現が見てもらえると、「こういう作風の人」という認識が生まれ、それが仕事の依頼につながることもあります。
混ざると、すれ違いが起きる
2つが混ざると、次のようなすれ違いが起きやすくなります。
・依頼者の目的と、自分の表現がずれて、修正が増える
・自分の作風を、依頼者に押しつけてしまう
・逆に、依頼に合わせすぎて、自分の作品づくりが止まる
原因の多くは、「いま、どちらの仕事をしているのか」が曖昧なことです。自分の中で区別がついていないと、相手にも伝えられません。
線を引く、3つの工夫
線の引き方には、コツがあります。
1. 依頼の前に、「これは作る仕事」と共有する。目的と範囲を、最初に確認します。
2. 自分の表現は、別枠で確保する。自主制作の時間を、予定に入れておきます。
3. 作風は、見せる場で伝える。ポートフォリオで得意を見せておくと、合う依頼が届きやすくなります。
3つ目は、見せ方の記事でも詳しく扱っています。
線を引く工夫の一つは、仕事の条件を言葉にして残すことです。厚生労働省のフリーランスガイドラインは取引条件の明示を求めており、どこまでが依頼の範囲で、どこからが自分の表現活動かを、発注の段階で切り分ける助けになります。
2つは、互いを育てる
分けて考えると、2つは対立するように見えます。しかし実際には、互いを育てます。作る仕事で出会う制約や、相手の視点は、表現の幅を広げます。表現で試した新しい手法は、仕事の提案の引き出しになります。
大切なのは、どちらか一方を捨てることではなく、いまどちらの帽子をかぶっているかを、自分で分かっていることです。
いま、どちらの帽子か、確かめる3つの問い
自分が、いまどちらの仕事をしているのか迷ったときは、次の3つの問いが役に立ちます。
・これは、誰のためのものか(依頼者か、自分か)
・評価するのは、誰か(相手か、自分か)
・締切や内容を決めるのは、誰か
答えが「相手」に偏れば、作る仕事です。「自分」に偏れば、表現する仕事です。答えが混ざっているときは、どちらを優先するのかを、先に決めておきます。
表現が、仕事を連れてくることもある
自分の表現を発信していると、「こういう作風の人」と認識されます。その作風が気に入った人から、似た依頼が来ることがあります。表現は、仕事の入口にもなるのです。 雑誌や資料で情報を集めたい場合は、Fujisanも参考になります。
ただし、作風を気に入って依頼してくれた場合でも、依頼の目的は別にあります。「作風は活かしつつ、目的を達成する」という共通認識を、依頼の最初に確認しておくと、すれ違いを防げます。
表現活動で音楽を使う場合は、仕事の制作と同じく権利の確認が要ります。楽曲の利用許諾の窓口については、JASRAC(日本音楽著作権協会)が管理楽曲の許諾手続きを案内しており、公開前に確認しておくと、表現の場を仕事の実績として見せやすくなります。
役割を分けると、続けやすくなる
2つの役割を、同じ時間に混ぜないことも、続けるコツです。たとえば、週のうちの何日かを依頼の仕事に、残りの時間を自分の表現に、と枠を分けます。
枠が決まっていると、依頼の仕事のときは、相手の目的に集中できます。自分の表現の時間は、誰にも邪魔されずに、試したいことを試せます。分けることで、どちらの仕事も、質が上がっていきます。
分け方に、決まった正解はありません。参考までに、いくつかの工夫を挙げておきます。曜日や時間で分ける方法は、たとえば平日は依頼の仕事、週末の午前は自分の表現、というように、時間の枠を固定する形です。場所で分ける方法もあります。仕事用の机と、制作用の机を分けるだけでも、気持ちの切り替えがしやすくなります。道具やファイルの置き場を分けるのも効果的です。依頼のデータと自作のデータが混ざると、うっかり取り違えるミスにもつながるからです。もうひとつは、名前をつけることです。依頼の仕事は「受注の時間」、自分の表現は「実験の時間」のように、呼び方を決めておくと、頭の中でも区別がつきます。分けたあとは、1か月ほど続けてみて、窮屈に感じるところを調整します。収入のために依頼を増やしたい時期と、表現に力を入れたい時期は、人によって違います。自分の状況に合わせて、割合を変えていって構いません。依頼者に対しても、表現の時間を持っていることを、無理のない範囲で伝えておくと、スケジュールの調整がしやすくなります。ただし、個人的な事情まで、詳しく話す必要はありません。大切なのは、どちらの帽子をかぶっているかを、自分でも相手にも、はっきりさせておくことです。最後に、迷いが出たときの合言葉をひとつ。「いまの自分は、誰のために作っているか」。相手のためなら依頼の仕事、自分の問いのためなら表現の仕事です。この一言で、立ち位置が整理され、気持ちの切り替えもしやすくなります。
HYPEの公式サイトでは、ほかのテーマの記事もまとめて読めます(HYPE公式サイト)。

まとめ
作る仕事は、依頼者の目的を実現する仕事。表現する仕事は、自分の考えを形にする仕事です。ものさしが違うので、混ぜると迷いやすくなります。依頼の前に役割を共有し、自分の表現の時間を確保し、作風は見せる場で伝えましょう。
出典
・文化庁の著作権制度の解説
・厚生労働省のフリーランスガイドライン
・JASRAC(日本音楽著作権協会)
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