クリエイターの時給の計算方法|単価設計の出発点
「自分の時給はいくらなのか」と聞かれて、すぐに答えられるクリエイターは多くありません。案件ごとの金額は分かっても、制作に…
text: HYPE編集部
Webデザイナーの記事一覧へ「自分の時給はいくらなのか」と聞かれて、すぐに答えられるクリエイターは多くありません。案件ごとの金額は分かっても、制作にかかった時間まで含めて計算したことがない、という人がほとんどだからです。時給を知ることは、安売りを避け、単価を決める最初の土台になります。この記事では、クリエイターの時給の計算方法を、手順に沿って整理します。数字は、あくまで計算の例として示します。はてなブログでは、別の角度から時給の考え方を紹介しています。
なぜ、時給を出すのか
案件の金額だけを見ていると、見えない時間が抜け落ちます。打ち合わせ、修正対応、メールのやり取り、納品作業。これらは報酬の項目には載らなくても、確実に時間を使っています。
時給を計算すると、「忙しいのに稼げない」状態の原因が見えてきます。金額が大きい案件でも、時間がかかりすぎていれば、時給は低くなります。反対に、金額が小さくても、短時間で終わる案件なら、時給は高くなります。時給は、案件を比べるための共通の物差しになります。
時給は、この式で出す
計算の式はシンプルです。
時給 =(受け取る金額 − 経費)÷ その案件にかけた総時間
大切なのは、分母の「総時間」に、制作以外の時間も入れることです。具体的には、次の時間を数えます。
- ヒアリングや打ち合わせ
- 企画や下調べ
- 制作そのもの
- 修正対応
- 連絡、見積もり、請求などの事務
- 納品の作業
作業ごとに時間を記録しておくと、次の見積もりの精度も上がります。最初は大まかなメモでもかまいません。
式の目安として、雇用の世界での最低ラインも知っておくと感覚がつかめます。地域別の最低賃金は、厚生労働省の最低賃金特設サイトで公表されており、フリーランスの時給を考えるときの、社会の物差しの一つとして参照できます。
計算してみよう(仮の数字)
実際の数字ではなく、考え方を知るための仮の例です。
- 受け取る金額:50,000円
- 経費(有料素材など):5,000円
- かかった総時間:15時間(制作10時間+打ち合わせ2時間+修正2時間+連絡・事務1時間)
この場合、時給は(50,000−5,000)÷15=3,000円です。
もし、制作の10時間だけで計算すると、45,000÷10=4,500円になります。見た目の時給は高くなりますが、実際に使った時間を含めると3,000円です。この差が、「見えない時間」の大きさです。

必要な時給は、逆算する
次に、自分が必要とする時給を逆算します。これも仮の例です。
- 生活と事業を続けるために必要な月の売上:30万円
- 月に稼働できる時間:160時間
- そのうち、実際に報酬が発生する時間:80時間(残りは営業、事務、学習、移動などに使う)
この場合、必要な時給は300,000÷80=3,750円になります。
大切なのは、稼働時間のすべてが報酬につながるわけではないという点です。営業や学習の時間は、請求できません。その時間の分も、請求できる時間の単価に乗せる必要があります。
逆算では、売上げから税金や申告の負担も差し引いて考える必要があります。所得税や確定申告の手続きについては、国税庁が申告の案内を公開しており、手取りベースで必要な時給を置くときの前提になります。
時給が役に立つ場面
時給は、次のような判断に使えます。
- 見積もりの下限を決める:これ以下では受けない、という線を引く
- 案件を受けるか迷ったときの判断材料にする
- 値上げのタイミングを考える
- 外注に出すかどうかを判断する
自分の時給が分かると、「この金額なら受ける」「この条件なら断る」を、感覚ではなく数字で決められます。値付けの全体の流れは、別の記事で整理しています。 見積もりや請求の管理をまとめて行いたい場合は、freee会計も参考になります。
時給だけで、決めない
注意したいのは、時給は「下限の物差し」であり、価格そのものではないという点です。成果物が相手にもたらす価値が大きければ、時給より高い金額で提案することもできます。逆に、経験が浅い時期は、学習のコストとして、時給が低くなることを受け入れる場面もあります。
大切なのは、意図を持って決めることです。時給を知らないまま安く受けるのと、時給を知ったうえで、実績づくりのために安く受けるのとでは、結果が大きく変わります。お金の基本は、別の分野の視点からも学べます。
時給が低かった案件を、どう扱うか
計算してみたら、思ったより時給が低かった。そんな案件があっても、落ち込む必要はありません。むしろ、次に活かせる情報が手に入ったと考えます。
まず、原因を分けて考えます。見積もりの時点で、作業時間を少なく見積もっていたのか。修正が想定より多かったのか。打ち合わせに時間がかかったのか。原因が分かれば、次の見積もりで、その分を織り込めます。
記録を続ける、3つのコツ
時間の記録は、細かくしすぎると続きません。次のようなコツで、気軽に続けます。
- 記録は粗くてよい(30分単位など、自分が続けられる単位で)
- 「制作」「打ち合わせ」「修正」「事務」のように、項目を分けて記録する
- 月末にまとめて見て、案件ごとの時給を出してみる
記録がたまると、自分の得意な仕事と、時間がかかる仕事が見えてきます。時給の高い仕事を増やし、低い仕事を見直すという、経営の判断ができるようになります。
作業時間の記録は、たまったデータそのものが次の見積もりの資産です。記録データの保管や漏えい対策については、IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティの案内が基本対策をまとめており、顧客名を含む記録を安全に残すための点検材料になります。
時給の考え方は、成長とともに変わる
経験を積んで、作業が速くなれば、同じ金額でも時給は上がります。反対に、新しい分野に挑戦する時期は、時給が下がっても、学びとして割り切る場面もあります。
大切なのは、時給を知らないまま走るのではなく、知ったうえで、意図して選ぶことです。
最後に、時給の記録を続けるときの心がまえをひとつ。数字は、自分を責めるためではなく、選ぶための材料です。時給が低かった案件があっても、それは失敗とは限りません。新しい分野に挑戦した、実績づくりに役立った、長いつきあいにつながったなど、数字に表れない価値もあります。そうした理由をメモに添えておけば、数字だけを見て落ち込むことが減ります。反対に、時給が高かった案件でも、無理をして体調を崩してしまっては続きません。時給と、気持ちや体力の余裕とを、あわせて見ていきます。記録の形式は、表計算ソフトでもノートでも構いません。続けやすい道具を選んでください。最初から完璧に記録しようとしなくて大丈夫です。数か月分の記録がたまったら、案件の種類ごとに平均を出してみると、次にどんな仕事を増やしたいかが見えてきます。
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まとめ
時給は、(受け取る金額−経費)÷総時間で計算できます。総時間には、制作以外の時間も必ず入れます。必要な時給は、必要な売上と、請求できる時間から逆算します。時給は下限の物差しとして使い、価格は成果物の価値も踏まえて決めましょう。まずは、直近の1案件で計算してみてください。
出典
・厚生労働省の最低賃金特設サイト
・国税庁
・IPA(情報処理推進機構)の情報セキュリティの案内
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